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南島叢書

奄美随想 わが奄美

注文する書籍の紹介長田須磨 著
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 こんな霊的な中で私は過ごしていたのに却って霊魂の恐ろしさをいつもさけて過ごし、本年三月奄美のウルヰグシをとおして、静かに考え始めて気がついた。この事を建築家に話したら家が出来上がったら柱の上部の見えないところに少し傷をつけるということを話した。これもまた完全を避けることによるものだろう。なぜそんなことをするのか、完全なもの非の打ちどころのない美しいものなどは、悪霊にねたまれ、わざわいを受ける恐れが私たちの先祖の心を占めていたからに違いない。

 再び蝶形に移るが、次のような昔話がある。

  昔あったそうな、仲の良い夫婦がいたのに、ふとしたこと から夫が妾をかこった。妻はその悩みに堪えかねて首を吊っ て死んだという。
  或る夜この妻は幽霊に化けて、かつての自分の家に入って 来た。夜は次第に更けて、やがて一番鶏がときを告げる頃に なった。そこで幽霊は言った。「かくかくしてこの家に入っ て来ました。やがて一番鶏がときを告げる前までに幽界に帰 らなければなりませんのに、行灯が室の対角線上に置いてあ って(つまり三角形)どうしてもそこを越すことができませ  ん。すみませんがその行灯を室の角にそっとおいて下さいま せんか」と言ったそうだ。

 何だかファウストと悪魔との問答に似ていて興味深い。

 女陰は三角形に、また貝に象徴されて呪詛力をもつといわれ、奄美ではスイジ貝を軒下につるして魔除けに使用する。本土の安産のお守りの子安貝もこんなところから生まれたのだろうか。

 ただの三点でつながってひとつの形あるものの出生を見た三角形、そこから万象が誕生したのだろうか。
 神になれるノロのきもの、ガワル玉、幼時を守る三角形・手毬の花・節句の餅・死の忌の三角帽・首からかける匂袋の三角形・キリスト教のメダインや、首からかけるネックレスなどの先止めによって作られる三角形、旧軍人帽の天につけられた二重三角形、あげると数限りない三角形とその重なりからなるものの姿によって私たちは生活をしている。この三角形はこの世の始まりと共に生まれて生き続けて万象を支配する、守護力や呪詛力を神から授かったのだろうか。
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第二章 奄美の女性と霊力
   「霊魂にまつわる三角形」より
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