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一般書

エッセーのような 沢 孝子評論集

注文する書籍の紹介沢 孝子 著
 島尾文学にとって大切なのは、初期作品からの「異和」の視点だと思いますが、関東で生まれた島尾敏雄は、幼年の頃によく祖母と、東北の母の実家で暮らした経験をもちます。
 更に、父の商売上で移り住んだ関西、学生や軍隊生活の北九州、奄美も加わって、日本列島の歴史上の断層を覗いてしまったという宿命を背負っています。そこに、「異和」の視点に深化をみましたが、柔軟な個性のなかに鋭い視点をもつスケールの大きな作家である島尾敏雄は、私には列島くねくねと横たわってきた像のような風貌の魅力を感じさせるものがありました。
 また、島尾文学の中心に流れる「蛾の死」と「貝の狂気」のイメージは、奄美の体験からくるものですが、集大成としての『死の棘』の小説にも、『ヤポネシア論』にも、大きく影響していると思います。
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・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・・・・
 この「ヤポネシア」論へ到達するまでには、島尾敏雄の苦難な小説の世界の道程が見えてきます。「琉球弧と東北」を基本にした歴史です。
 「偏倚」という1948年頃のエッセーは、若さからくる強烈なイメージがあります。奇妙な無意識の鉛直線偏倚という鉛の珠の糸を吊り下げて歩くことで、東北の深層心理に触れていると読み取りましたが、<身体や精神の中には、たてよこに無数の糸が乱視のように、>の言葉にあるように、その視点の行き着くところに、縦の線に歴史や文化の相違、その亀裂が、横の糸に琉球、東北、アイヌなどの異質の歴史が私には見えてきたものがあります。
 終戦になり、軍隊の解除で関西の親の家に帰って来た島尾敏雄は、小説を書き始めますが、この頃の作品に注目するものが多く、東北や琉球がよく見えてきた思想的充実があります。更に、二回目の奄美の生活で、自信を深め『ヤポネシア論』の世界が形成されていったと思います。
 ≪ヤポネシアの根っこ≫(1961年)の愛情あふれた優しい文 面があります。

 〈奄美には日本がもっているもうひとつの顔をさぐる手がか りがあるのではないか。頭からおさえつけて浸透するもので はなく、足うらの方からはいあがってくる生活の根のような もの、この島々のあたりは大陸のうろこに覆われることがう すく、土と海のにおいを残していて、大陸の抑圧を受けるこ とが浅かったのではないか〉

「島尾敏雄」論より
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