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一般書

翰苑(かんえん) 2014.11vol.2

注文する書籍の紹介近大姫路大学 人文学・人権教育研究所 著
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中世の播磨
 古代播磨は、確かに豊かな国でありました。大国の中の大国として存在感を増すのですが、しかし、「豊かな播磨の富」の大半は、受領、荘園領主によって収奪されていたのも事実です。それは「荘園制度」という国家体制のなせる業で、せっかくの生産物も、地域に十分還元されてはいなかったのです。これに疑問を感じ始めたのが、後に「悪党」と呼ばれるグループです。乱暴な行動で荘園領主らに敵対行動を取るのですが、やがて「下地中分」など在地勢力にとって有利な生産配分制度を確立していきます。悪党は、農業先進地で多発し、ことに播磨においては「国中名誉の悪党」などと称されるほど、その存在が広く全国に知れ渡っていました。そして、この悪党グループと深くかかわる一族が播磨に出現します。それが赤松一族です。
 赤松氏の出自ははっきりしませんが、佐用庄から勃興した一族で、鎌倉時代末期、則村(のち円心)の時代に、後醍醐天皇の鎌倉討幕の呼びかけに応じて、播磨・備前国境に近い苔縄(こけなわ)(現在の上郡町)で挙兵します。摩耶山(神戸)、尼崎などを経て京都に突入、苦戦の末、鎌倉政権に見切りをつけた足利高氏(のち尊氏)と連携し、幕府の六波羅軍を破り、「建武の新政」実現に最大の貢献をします。ところが、後醍醐帝と足利尊氏との確執では、尊氏に与して西国に追われます。『愚管抄』などによると、落ち行く足利軍は途中の兵庫、室津で軍議を開きますが、この時円心は尊氏に対し「三つの提案」をしたといわれます。① まず九州に落ち延び反撃体制を整えよ ② 後醍醐天皇に反逆する〝逆賊〟にならないよう、光厳上皇の院宣を得て戦え ③ 反撃体制を整える時間を得るために自分(円心)は自城の白旗山で追討軍を食い止める―。
 尊氏は、この大胆、的確な円心の作戦計画通り、九州から反撃を開始し、兵庫・湊川で後醍醐天皇側の主力である楠木正成軍などを破り足利幕府を開くこととなります。
 こうした赤松氏のエネルギーは、旧来の荘園制度に疑問を提示した「悪党勢力」などをも包括して、いわば「オール播磨の力」を結集することに成功した結果、生まれたものだといえます。こうした播磨の力なくして、足利幕府の誕生はあり得ないといえましょう。
 赤松氏はその後、足利政権の中枢に入ります。幕府の政治は、政務全般を統括する「管領」と、最重要ポストの軍事・司法を統括する「侍所長官」を両輪として執行されます。管領職は細川、斯波、畠山の三家が交代で担当し、「三管領」と呼ばれます。「侍所長官」には、赤松氏をはじめ、山名、一色、京極という四家が順に就任します。「四職」と呼ばれる実力名家ですが、赤松氏は、その一角を占めることになります。
 中央政府における評価もさることながら、赤松氏の、地域における評価も特筆すべきものがあると考えます。それは、播磨という「大国」を、はじめて一体的に統治することに成功した豪族であるということです。
 現在の播磨は、もともとは古代の地方長官「国造」がそれぞれ支配していた主として明石川流域の「明石」、加古川流域の「針間鴨」、姫路以西の「針間(播磨)」という三つのエリアからなっていました。確かに「播磨守」など中央権力による一体的な支配地ではありましたが、実際には、旧来の川筋にそった南北の縦軸エリアが、それぞれ独自の地域を形成し、なかば〝鼎立(ていりつ)〟したような状況だったと考えられます。赤松氏は、在地権力としてはじめてそれを一つにまとめあげたということができます。このことは、これまで中央に吸い上げられていた豊かな「播磨の富」を、地域に蓄積できるというシステムを築いたことになります。それは、地域自身が、独自で「地域の力」を強めることを可能にするということを意味しています。この地域エネルギーを結集して、赤松氏は「中世日本」において一時代をつくり上げていったのです。
 一族はその後、「嘉吉の乱」で滅亡しますが、再び〝奇跡の復活〟を遂げ、播磨の一円支配を続けます。しかし、やがて置塩城に居を構えた赤松本家の弱体化が始まり、三木、御着、龍野、山崎など各地を治めていた配下の小豪族らが台頭、戦国播磨は群雄割拠の状態になります。黒田官兵衛もこうした状況を背景に登場し、播磨の勢力は織田信長、羽柴(豊臣)秀吉、徳川家康と続く〝天下人〟の動向を左右しつつ、近世を迎えます。
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中元孝迪「播磨の魅力」より
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