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翰苑(かんえん)創刊号2014.3vol.1
近大姫路大学 人文学・人権教育研究所
1,200円+税
一般書 学術雑誌 / 並製 A5版 / 232頁 / 2014/3 初版
ISBN 978-4-87616-028-0 C3030
菅家後集の詩「謫居春雪」を読む/三木露風第三詩集『寂しき曙』分析と鑑賞/故郷喪失とナショナリズム/現代宗教の指導者崇拝/そばにいるということ/教育、福祉の諸制度における「養護」概念/近世港湾都市機構「形成」過程/播磨の災害記念碑/近世被差別民の「主体」としての信仰
2023.10.19
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柳田は現存する雑多な民間信仰を、日本人固有のものとして、宗教意識の統一をはかろうとする。やはり彼にはある一つの前提となる国民統一像というものがあって、そこに宗教意識も持ち込もうとしているように思える。
ムラ人たちは自分たちの神を深い闇のなかに置くことによって、わが身を守ることを知っていた。
柳田にはこの闇の部分の土着性というものが、いま一つ実感として理解しえなかったのかもしれない。
故郷喪失者柳田がどんなに郷土性を唄っても、それは郷土のためのものではなく、日本全体のための手段でしかなかった。
故郷を日本全土、日本国家にもとめたように、彼は氏神信仰を全国共通のものにすべく、ムラ人の自覚を欲したように思う。
柳田には、はじめから郷土定着の論理がないのである。徹底した郷土主義があれば、そのことから発せられる諸々の方向性があるはずである。しかし、彼の場合、郷土意識の希薄さからくる不安定さを、いきおい普遍にもとめ、国家にもとめるようなところがある。 柳田のナショナリズムへの方向性の淵源の一つはここにあるかもしれない。
「故郷喪失とナショナリズム」-柳田国男の場合- より