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著者からのお便り 2023.12.12

「いろは文字鋂」新作が届きました!

「いろは文字鋂」新作が届きました!
 
「しりとり」といえば、幼子の遊びですが、これは優雅で知的な大人のしりとりワールド。
15世紀室町時代の中期に流行した「文字鋂(くさり)」という歌あそびに出遭ってしまった著者が独自のルールのもとに更に「文字鋂」を進化させてしまったのです。
ルールはシンプル。
同音でつないだ尾音と頭音をたどっていくと「いろは歌」になるというもともとの「文字鋂」の約束事を踏襲すること。
文語体(旧仮名遣い)であること。
できる限り定型を守ること。
一度使った句はつかわないこと。
 
その著者の江尻成泰さんが最新作を送ってくれましたので、ご披露します!
 

い ろ は 文 字 鋂(くさり)(その三十二ー徘徊いろは)

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いろはにほへと ちりぬるを    色は匂へど 散りぬるを

わかよたれそ  つねならむ    我が世誰ぞ 常ならむ

うゐのおくやま けふこえて    有為の奥山 今日越えて

あさきゆめみし ゑひもせす    浅き夢見じ 酔ひもせず

(ん)

 

 

岩風呂古風呂(こぶろ)ーー路地裏枯れ葉ーー花一輪にーー日本語炎(ほのほ)ーー

炎を捉(とら)へーー碧空(へきくう)見るとーー東京の街(まち)ーー地上海鳴りーー

林檎(りんご)食ふ犬ーー盗み屋お猿ーー累世(るいせ)丈夫(ますらを)ーー女(をみな)となす輪ーー

技あり見たかーーかのツケコシよーーよき古き歌ーー高岡来(こ)られーー

歴史語るぞーー其処(そこ)な老松(おいまつ)ーー月影琴音(ことね)ーー寝覚(ねざ)めよきかなーー

名古屋弁ならーー乱詩も弾(はず)むーー無用(むよう)大用(たいよう)ーー宴(うたげ)残り居(ゐ)ーー

礼(ゐや)やか囲碁のーー残るかやおおーー大阪遠くーーcar(くるま)と旅やーー

大和まほらまーーまほろば夜明けーー堅牢(けんらう)タケフーー太き筍(たけのこ)ーー

この鄙路(ひなぢ)越えーー縁起(えんぎ)担(かつ)ぎてーー寺詣(てらまう)でああーー生憎(あやにく)雨さーー

酒を頂きーー霧の中の温泉(ゆ)ーー夢のまた夢ーー恵みの極(きは)みーー

魅惑の話ーー四季万葉絵(まんえふゑ)ーー咲酒(ゑぐし)飲み酔(ゑ)ひーー人をも身をもーー

文字もて残せーー千の句生かすーーすべてはこれ无(む)

二〇二三年(令和五年)十二月九日

 

 

        註

 

地上海鳴り=巨大都市東京のざわめき、うねり。

かのツケコシよ=ツケコシは囲碁用語。相手のケイマの石にツケて切りにいく手。ケイマはある石から二つ前の斜めに置くこと。将棋の桂馬の進み方に似る。

高岡来(こ)られ=高岡、富山方言。「高岡においで、いらっしゃい、いいところだから」というような気持ち。

礼(ゐや)やか囲碁の 残るかやおお=AIが跋扈する近年、昔からの棋道、棋品はこの先……?

car(くるま)と旅や=「car(くるま)で」ではない。単なる移動手段ではなく、旅の友、「旅は道連れ」。

大和まほらま=「まほらま」はすぐれたよい所。「まほろば」に同じ。

   倭建命(やまとたけるのみこと)は死ぬ前に次の歌を歌った。(古事記)

   倭(やまと)は 国のまほろば たたなづく 青垣(あをがき) 山隠(やまごも)れる 倭しうるはし

堅牢(けんらう)タケフ=タケフも囲碁用語。二つの石が間をあけて平行に並んでいる。手抜きしない限り相手から切られることはない。(昔は竹節と書いたりしたらしい。)

咲酒(ゑぐし)飲み酔(ゑ)ひ=咲酒(ゑぐし)は飲んで楽しくなる酒。笑酒とも書く。咲は笑に通ずる字で「わらう」とも読む。

人をも身をも=また百人一首から盗み取り。

 

 

後  記

 

 再三再四の気まぐれ遊び。元来のしりとりに戻ったつもり。特段のコメントはない。

四か所の地名は筆者の個人的理由。

そろそろ、この「いろは文字鋂」は、断筆、……… 休筆?

二〇二三年(令和五年)十二月九日