本書は「伝統」という言葉をキーワードに、現在の南島における畑作穀類栽培の様相を考察する。
アワ・ムギといった伝統作物のついての聞き取り調査や、一度は衰退しながら、近年、復活の傾向にあるキビ、祭祀での使用のためなどで細々と栽培され続けている穀類の様子を、それに関わる人々の意識とともに浮かび上がらせることで、南島の穀類栽培の様相を「伝統」という観点から検証していく。
また、宮古島や竹富島等の島々のフィールドワークで、アワ専用のカマやウスといった、これまで取り上げられることの少なかった農具を紹介するなど、この分野の研究を進める上での資料としても注目される。
約16年にわたって著者が続けてきた調査研究の成果をまとめた書である。 |